診療科のご案内
整形外科
皆様へ
整形外科の治療対象は、手足の骨折や脱臼などの外傷、脊椎・脊髄疾患、変形性関節症などの関節疾患、スポーツ外傷・障害、骨・軟部腫瘍、骨粗鬆症など多岐にわたっています。これらの疾病はいずれも、人が立ち、歩き、手を使うのに必要な運動器機能を障害するもので、痛みやしびれを伴い生活の質を低下させます。
整形外科では運動器の治療をとおして、皆さまの痛みやしびれを取り除き生活の質が向上するお手伝いをしています。また、超高齢社会を迎えて整形外科のニーズも増しており、できる限り地域の要望に応えていかなければと考えています。そのために整形外科の各分野で常に最新最良の治療を行えるよう日々心がけています。
さやま総合クリニックで運動療法、薬物療法、理学療法などの保存療法を行い、埼玉石心会病院で主に手術療法を行っています。また当院での手術が難しい場合は、他の専門病院を責任もって紹介させていただきます。
主な対象疾患
外傷疾患:骨折、脱臼、神経損傷、腱損傷など。
慢性疾患:脊柱管狭窄症、頚椎症性脊髄症、脊柱靭帯骨化症、椎間板ヘルニア、変形性股関節症、変形性膝関節症、変形性肩関節症、変形性肘関節症、TFCC損傷、上腕骨外側上顆炎、母指CM関節症、リウマチ手、腱鞘炎、絞扼性末梢神経障害(手根管症候群や肘部管症候群など)、肩腱板断裂、骨粗鬆症、炎症性疾患、骨・軟部腫瘍、転移性骨腫瘍など。
母指CM関節症(親指の付け根の関節の変形性関節症)
原 因
母子(親指)CM関節は、他の指と向き合ってつまむ、握る動作を行う大きな動きのある関節です。よく動く分、使い過ぎや加齢に伴い、関節軟骨の摩耗が起きることが原因とされています。
男女比2:3で特に40歳以上女性に多く、手をよく使っている方、関節が硬い、または柔らかすぎる方に多くみられます。
症 状
- 痛み
物をつまむ、瓶のふたを開けるなど、親指に力を入れると親指の付け根が痛みます。
軽症であれば、安静にしていれば自然と治りますが、進行すると以下の症状が起こる場合もあります。 - 腫れ・動作制限
親指の付け根が腫れ、つまむ、握るといった動作を行うとき、親指が開きにくくなります。 - 変形
親指の関節が曲がり、手前の関節が反る場合があります。
検査・診断
親指の付け根を押すと痛みがあり、また親指を捻るような動作で強い痛みがあるかを確認します。
レントゲン検査では、CM関節のすき間が狭く骨に異常がないか、亜脱臼などを確認します。
CM関節症以外にも、指先が痺れる「手根管症候群」や、手首が痛い「腱鞘炎」、「リウマチよる関節炎など」があり、それらとは区別しなければならず、整形外科による診断が必要です。
治 療
- 保存療法
抗炎症薬の注射療法、痛み止めの内服、消炎鎮痛剤入り貼り薬などを利用した対処療法が基本です。
また痛みが頻繁に起こる場合などには、関節保護用の軟性装具装着や包帯で動きを制限し、安静を保ちます。 - 手術療法(関節形成術、関節固定術)
痛みが強い場合や関節変形がある場合、手術が必要となります。
関節形成術は変形した骨を部分的に切除し、靱帯を再建します。場合により切除した骨を移植したりします。2~3週程度シーネ(あて木)の固定後、リハビリを開始して6〜8週後から日常使用が可能になります。
関節固定術はCM関節が固定されますが除痛効果がよく、つまむ力が改善します。
画像:埼玉石心会病院
術後のリハビリ
- 母指を固定し、安静を保ちます。また母指以外の関節が硬くなることを防ぎます。
- その後、痛みにあわせて母指の運動を開始し、徐々に関節の動きを広げる訓練をします。
- 負荷がかけられる時期が来ましたら、つまみ動作や筋力トレーニングを開始します。
- 日常生活に支障がなくなればリハビリ終了です。
リハビリ内容例(下記の内容などを組み合わせて行います)
- 関節可動域訓練
- 腱滑走訓練
- 筋肉のマッサージ
- 超音波療法
予 防
- 無理な位置やバランスの悪い位置での母指の使用を避ける
- 負荷を減らす(過剰な力を使わない)
- こまめに休憩をとり、長時間の使用を避ける
- 同じ動作を繰り返さない
セルフエクササイズ(母指内転筋のストレッチや筋力トレーニング)で関節の柔らかさを保ち、痛みのある時は無理をしないようにしましょう。
https://www.jssh.or.jp/ippan/sikkan/pdf/15boshi-cm_3.pdf
※日本手外科学会HP「手外科シリーズ」より引用。
手根管症候群(正中神経麻痺)
原 因
手首から手のひらの真ん中にあるトンネル「手根管」の中を、正中神経という神経と指を曲げる腱が走っています。正中神経は、指先の感覚や手の動きにおいて重要な役割をはたしています。
正中神経が圧迫されると、人差し指、中指を中心にしびれ、痛みが出ます。
多くは原因不明ですが、女性に多く生じます。妊娠、骨折、手を酷使する方にも生じ、閉経、透析も原因と考えられています。
症 状
- しびれと痛み
人差し指、中指を中心にしびれ、痛みが出ます。しびれは薬指や親指に及ぶこともあります。特徴として、明け方にしびれや痛みが強くなり、手を振ることで楽になります。 - 動作制限
親指の付け根(母指球)がやせてしまい、縫い物やボタンかけなどの細かい作業が困難となり、親指と人差し指でのOKサインができにくくなります。
検査・診断
- ティネル様徴候
手首(手関節)を叩くととしびれ、痛みが指先に響きます。 - 手関節屈曲テスト
下図のように手首を曲げてしばらくすると症状が悪化します。
補助検査として、電気を用いた筋電図検査を行い、腫瘤が疑われる場合には、エコーやMRIなどの検査が必要です。
治 療
- 保存療法
なるべく手を使わないよう安静にします。手首に装具を装着する場合もあります。 - 薬物療法
ステロイド薬を手根管の中に注射し、安静を保ちます。 - 手術療法
正中神経への圧迫を取り除きます。患者さんの状態などを考慮して決定されます。
どちらの治療も術後すぐに手を軽く使えますが、水にぬらしたり通常の使用ができるのは術後2週前後です。- 関節鏡視下手根管開放術
内視鏡を用いて、小さな切開で行います。キズが小さく痛みも少ない傾向があります。 - 手根管開放術
手のひらを3cm程度切開して行います。
- 関節鏡視下手根管開放術
予 防
日常的に手首を休ませるようにしましょう。
https://www.jssh.or.jp/ippan/sikkan/pdf/1shukon_4.pdf
※日本手外科学会HP「手外科シリーズ」より引用。
肘部管症候群
原 因
肘の内側にある「尺骨神経」という小指側の感覚と手指・手首の運動を司る神経が傷み、初期には小指や薬指の一部にしびれ感がでます。
尺骨神経が慢性的に圧迫されたり、牽引されることで発症します。以下のような原因があげられます。
- 神経を固定している靭帯やガングリオンなどの腫瘤による圧迫
- 加齢に伴う肘の変形
- 肘の骨折による変形
- 野球や柔道などのスポーツによるもの
症 状
- しびれ感
麻痺の進行により症状が異なります。初期は小指と薬指の一部にしびれ感が出ます。 - 変形
進行すると手の筋肉がやせてきたり、小指と薬指の変形が起きます。
検査・診断
肘の内側を叩くと小指と薬指の一部にしびれが走ります。
レントゲン検査で外傷や加齢に伴う肘の変形が見られることがあります。
筋電図/神経伝導検査やMRIを行うことがあります。
治 療
- 保存療法
薬物の投与・肘の安静を行います。 - 手術療法
- 尺骨神経を圧迫している靭帯の切離やガングリオンの切除を行います。
- 神経の緊張が強い場合は、骨を削ったり、神経を前方に移動させる手術を行います。外反変形などの肘の変形がある場合には、変形を手術的になおす場合もあります。
予 防
- 肘を曲げることが多い(仕事で電話をかける事が多い、デスク作業が多い)方は要注意です。
- 無意識に強く肘を曲げやすい就寝時などは、肘にサポーターやタオルを巻くことも効果的です。
https://www.jssh.or.jp/ippan/sikkan/pdf/8hiji_4.pdf
※日本手外科学会HP「手外科シリーズ」より引用。
キーンベック病(月状骨軟化症)
原 因
手首の真ん中にある骨「月状骨」の血行障害により、月状骨がつぶれる病気です。
原因は不明です。月状骨は、周囲がほぼ軟骨に囲まれており血行が乏しいため、血流障害になり壊死しやすい骨のひとつです。
症 状
- 痛みと腫れ
手を使った後、手首の真ん中付近に痛みや腫脹(炎症などによる腫れ)が起きます。 - 動作制限
次第に手首の動きが悪くなり、握力が低下します。
検査・診断
症状とレントゲン検査で変形があれば、診断がつきます。MRI検査が早期診断には有効です。
治 療
- 保存療法
初期や痛みが強い時にはギプスや装具で固定し、手首の安静を保ちます。 - 手術療法
- 橈骨(とうこつ)短縮骨切り術
- 骨移植
従来の治療の多くは血行障害で壊死した月状骨そのものは改善しません。当院では病態に応じて橈骨(手首の骨)や大腿骨(太ももの骨)から血管ごと骨移植を行い、月状骨そのものを生き返らせる治療も行っています。 - 月状骨の摘出と腱球挿入(腱を丸めて、月状骨を摘出した部分に入れる)
- 人工月状骨移植
予 防
はっきりとした予防法はありませんが、早期発見が大切です。
症状が起きた時には早めに整形外科を受診しましょう。
https://www.jssh.or.jp/ippan/sikkan/pdf/16ki-nbekku_2.pdf
※日本手外科学会HP「手外科シリーズ」より引用。
TFCC(三角線維軟骨複合体)損傷
原 因
手首の小指側にあり、手のクッションとしての役割や安定性を保つ役割を担う「三角線維軟骨複合体(TFCC)」が損傷し、痛む病気です。「三角線維軟骨複合体」靭帯と軟骨の複合組織です。 「三角線維軟骨複合体(TFCC)」が損傷されることで痛みが出現します。
けがによるものと加齢に伴うものに大別でき、後者では無症状のこともあります。
症 状
- 痛み
腕を捻ったり、手首(以下、手関節)を小指側に曲げた時に、手関節尺側(小指側)に痛みが出現します。ドアノブを捻る時や鍋などを持ち上げる時などにも痛みが出ます。
検査・診断
手関節尺側の圧痛、運動時痛。手関節を尺屈(小指側に曲げる)した状態前腕を回旋させると痛みが誘発されます(コンプレッションテスト)
そのほか、レントゲンで橈骨・尺骨の長さに違いがあるかをチェックしたり、関節造影やMRIを行う場合もあります。
治 療
- 保存療法
- 固定やサポーターによる局所安静を行います。
- 局所麻酔剤入りのステロイドを注射して、炎症を抑えることもあります。
- 固定やサポーターによる局所安静を行います。
- 手術療法
「内視鏡」による修復術や「尺骨短縮術」など様々な手術法があります。
当院では内視鏡による修復術も積極的に行っています。
https://www.jssh.or.jp/ippan/sikkan/pdf/27TFCC.pdf
※日本手外科学会HP「手外科シリーズ」より引用。
整形外科の特色
埼玉石心会病院整形外科は、すべて東京医科歯科大学整形外科より派遣された医師にて構成されています。埼玉石心会病院整形外科が得意とする分野は、上肢(肩、肘、手)、下肢(股関節、膝関節)、脊椎であり、各分野で高度な手術による治療を目指しています。
上肢の分野は、山田部長、野本榮医師(非常勤)を中心に行っています。当院は手外科専門医が常勤しており、日本手外科学会認定基幹研修施設になっています。 治療難易度の高い肘関節脱臼骨折や見逃されやすい舟状骨骨折など肩、肘、手の骨折、 脱臼はもちろん、テニス肘などのスポーツ障害、関節リウマチに対する関節形成術、変形性肩関節症、 変形性肘関節症、手指関節症に対する人工関節置換術、 顕微鏡下に行う切断指再接着などのマイクロサージャリー、指、爪欠損に対する足爪移植(遊離複合組織移植)TFCC損傷に対する手関節鏡、 肩腱板損傷に対する肩関節鏡、 デュピュイトラン拘縮、母指CM関節症の関節形成術、 胸郭出口症候群、肘部管症候群、手根管症候群などの絞扼性末梢神経障害なども積極的に行っており、上肢疾患の広い領域に対応可能です。
脊椎の分野は、角谷医長、松岡顧問を中心に行っています。頸椎・胸椎・腰椎いずれの部位においても、前方手術でも後方手術でも対処可能な技術を備えています。
角谷医長はドイツ留学の経験を生かした治療を行っており、またいくつもの脊椎分野の論文を世界に発表しています。厚生労働省指定の特定疾患(いわゆる難病)である頸椎後縦靭帯骨化症の前方手術について述べた、松岡顧問の研究論文はBioMedLibのTop 20 articleで、1位に数回選定されています
下肢の分野は高橋医長を中心に行っており、人工股関節および人工膝関節手術をはじめとしてあらゆる下肢外傷にも精力的に取り組んでいます。大腿骨近位部骨折や膝関節周囲骨折などは埼玉県トップクラスの手術件数を行っております。
高齢化に伴い合併症を持った患者さんにも麻酔科・内科の医師の協力を得て、安全に手術を行うように心がけています。
また、特殊な治療を必要とする骨・軟部腫瘍の分野では、日本トップクラスの腫瘍専門医を迎え、さやま総合クリニックで受診できる体制を作らせていただいております。
肘関節脱臼骨折

舟状骨偽関節

リウマチ関節形成術

人工肩関節置換術

人工指関節置換術

手指再接着術

遊離複合組織再建
(母指爪欠損・足爪移植)

腱板断裂

デュピュイトラン拘縮

胸郭出口症候群

治療実績




医師プロフィール
山田 哲也
役職
診療科長/整形外科部長
専門分野・得意とする手技
肩・肘・手外科(上肢機能再建外科)、末梢神経外科・マイクロサージャリー認定資格等
日本整形外科学会専門医・指導医
日本専門医機構認定整形外科専門医
日本手外科学会専門医・指導医
身体障害者指定医
臨床研修指導医
難病指定医
日本肘関節学会評議員
東京医科歯科大学医学部臨床准教授
中山 理沙
役職
整形外科副部長
専門分野・得意とする手技
整形外科一般
認定資格等
日本整形外科学会専門医・指導医
日本専門医機構認定整形外科専門医
臨床研修指導医
角谷 智
役職
整形外科医長
専門分野・得意とする手技
脊椎脊髄外科
認定資格等
日本整形外科学会専門医・指導医
日本脊椎脊髄病学会 脊椎脊髄外科専門医・指導医
日本専門医機構認定整形外科専門医
日本整形外科学会認定脊椎脊髄病医
日本脊椎脊髄病学会 脊髄モニタリング認定医
日本臨床神経生理学会認定医(術中脳脊髄モニタリング分野)
臨床研修指導医
身体障害者指定医
難病指定医
医学博士(東京医科歯科大学)
高橋 晃
役職
整形外科医長
専門分野・得意とする手技
膝・股関節・整形外科一般
認定資格等
日本整形外科学会専門医
日本人工関節学会認定医
日本整形外科学会認定運動器リハビリテーション医
身体障害者指定医
難病指定医
医学博士(東京医科歯科大学)
宮本 玲奈
専門分野・得意とする手技
整形外科全般
岡田 浩典
専門分野・得意とする手技
整形外科全般
石川 裕太郎(専攻医)
専門分野・得意とする手技
整形外科全般
松岡 正
役職
顧問
専門分野・得意とする手技
脊椎脊髄、脊柱靱帯骨化症
認定資格等
日本整形外科学会専門医・指導医
日本専門医機構認定整形外科専門医
脊椎脊髄外科専門医
日本脊椎脊髄病学会脊椎脊髄外科指導医
日本リハビリテーション医学会認定臨床医
日本整形外科学会脊椎脊髄病医
身体障害者指定医
臨床研修指導医
医学博士(東京医科歯科大学)
東京医科歯科大学医学部臨床教授
2012~2015 BioMedLib「後縦靭帯骨化症」のTop 20 Articlesで1位に選定
お問い合わせ
埼玉石心会病院
TEL.04(2953)6611