低侵襲手術による

オーダーメイド治療を実現

低侵襲脳神経センターについて

低侵襲脳神経センターについてご紹介します。

2017年11月に新築移転し開院した当院では今後ますます必要となる低侵襲治療を中心に行う低侵襲脳神経センターを開設しました。 当センターは、脳神経疾患領域に関わる脳神経外科・脳血管内治療科・神経内科・神経放射線科・ニューロリハビリテーション科の専門医師および専属技師、担当看護師、事務系スタッフを有しており、神経疾患に対して日々協同して診療にあたっています。 当センター医師の特徴として全員が各領域の専門医または指導医の有資格者であり、それぞれの専門家等がスクラムを組んでどこまでの医療が提供できるかを目指しているところが教育、研究、トレーニングをしながら人を育てている大学病院などと大きな違いになっています。

脳神経外科領域では主にカテーテルを用いた脳血管内治療を担当する専門常勤医師と脳神経外科全般の外科手術を担当する経験豊富な常勤医師らで構成され、さやま総合クリニックにて外来診療を行う常勤医師らと連携し対応しております。 神経内科医はしびれ、めまいなど様々な神経症状を呈する神経疾患やパーキンソン病をはじめとする神経変性疾患などの診療にあたっているほか、てんかん、脳波異常、せん妄などについてはベテラン精神科医師が外来を担当しております。 リハビリ部門は急性期リハビリおよび回復期リハビリを担当する常勤医師と多くのリハビリスタッフらにより積極的なリハビリを進めております。 放射線技師は当センター専属技師により脳血管造影装置やMRI装置、CT装置などを用いた専門的脳疾患治療や検査にあたっています。

手術は血管障害や外傷、脳腫瘍など脳神経外科領域の疾患に対応し、現在年間500例ほどの手術が行われています。その内、脳血管内手術とその他の脳外科手術がほぼ約半数ずつ占めている状況です(2022年:脳血管内手術228件、脳外科手術274件)。

低侵襲脳神経センターとは
低侵襲脳神経センターとは

年間10,000台ちかくの救急車を受け入れている当院では、脳神経系疾患の救急患者さんが非常に多く、 その中にはくも膜下出血(破裂脳動脈瘤)、急性期脳梗塞(心原性脳塞栓症)、脳内出血、頭部外傷、てんかんなどをはじめとする緊急患者さんも多く受け入れております。 また遠方を含め地域医療機関からの未破裂脳動脈瘤、頸動脈狭窄症、各種脳血管奇形の患者さんも大変多く御紹介頂いています。 更に特に力を入れている疾患として高齢者の歩行障害とともに認知症を呈する正常圧水頭症(i-NPH)があります。特に高齢者の増加が著しい埼玉西部地域では避けられない疾患であると認識しており2017年11月の移転以来本疾患の積極的取り組みを行っています。 この正常圧水頭症に関しては地域周辺の内科、神経内科、精神科、整形外科、脳神経外科などの先生方と地域で取り組む体制を計画しています。

低侵襲脳神経センターの外来は病院内2階にあり、入院病棟は4階B棟、C棟になります。病棟内には個室、4人部屋で構成される一般床の他に重症患者さんを担当するHCU(High Care Unit)、SCU(Stroke Care Unit)が設けられており、これらを含め全70床で運営しています。

侵襲とは刺激や負担、ストレス、ダメージなどという意味で医学の世界で良く使われる言葉です。 体に負担やダメージ(傷)、非生理的なストレスなどをかけ無いことを低侵襲と表現します。 これを我々の脳に対して使うと、脳のいかなる治療、検査などにおいて出来る限り脳への負担をかけないこと、ストレスやダメージ、傷を作らないことが脳に対する低侵襲です。 人間の脳は体のどの臓器よりも精密で細かく、出来たときが完成品であり傷つくと容易には回復しない非常に繊細な臓器です。ですから病気のいかなる治療においても脳を傷つけないことが大前提でなくてはなりません。

当センターではこの脳に負担をかけない治療を第一に考え、カテーテルを用いる脳血管内治療や神経内視鏡治療といった低侵襲手術を第一選択として患者さんの機能予後の向上に努めています。 脳を開けない血管内治療や神経内視鏡治療でも方法が不適切で技術が乏しければ決して低侵襲な治療は出来ません。逆にたとえ開頭を要する手術でもなるべく脳に負担をかけない手術法で行えれば十分低侵襲な治療となり、患者さんのより早い回復と入院期間の短縮、早期の社会復帰を目指す事が可能です。

低侵襲を追求する意味は?なるべく切らない低侵襲治療を最優先!
低侵襲を追求する意味は?なるべく切らない低侵襲治療を最優先!

脳の治療を受ける患者さんの中には頭を切らないカテーテル治療(脳血管内治療)は頭髪を切らなくて良いし、脳に触らず頭に傷が出来ないために簡単でより安全と思っている方がおりますが、本当の意味は少し異なります。 脳をなるべく傷つけずに治療する低侵襲治療は患者さんご自身にどんなメリットがあるのか? それは人間がより人間らしく生きていくために必要な脳の高次機能(記憶や言語、認知機能、情動など)が最大限残せる可能性が高いことです。 病気の治癒が治療の最終ゴールではありません。日常生活の維持や、仕事への復帰を含め人間らしい生活を取り戻し、更には発病以前の生活に回復して幸せになって頂くことが治療の最終ゴールと考えています。

脳外科手術は手術室で、脳血管内治療は血管造影室で行うのが多くの施設での現状ですが、病変部に外からアプローチする開頭手術と頭を開かず血管の中からアプローチする脳血管内治療を組み合わせることで、更に複雑で難しい病変の治療が可能になります。

当センター開設にあたり開頭術中の血管造影検査や神経内視鏡治療との組み合わせや、各種手術中の画像を使用出来る最新の医療設備を完備したハイブリッド手術室を開発しました。 これはドイツのSIEMENS(シーメンス)本社と共同で創ったもので、MRI・CT・血管造影・脳外科顕微鏡・ナビゲーション・神経内視鏡といった設備をすべて備え、手術や術中の検査に至るまで、患者さんを移動させる事なく治療が行える世界初の最新統合型ハイブリッド手術室です。 更に2019年春には最新のナビゲーションシステムと神経内視鏡手術用の機器を導入し、脳深部の病変にもより安全なアプローチが可能となりより確実で安全な治療を提供できるようになりました。 大型の医療機器に囲まれて患者さんが不安にならないように手術ベッドの真上の天井には自然素材(絵画、風景)を取り入れたライティングパネルを設置しました。

世界初の最新統合型ハイブリッド手術室
世界初の最新統合型ハイブリッド手術室

それぞれの患者さんには自分の病気について、受けるべき検査、治療などについて十分説明をさせて頂き、確実なインフォームドコンセントを得るように努力しています。 自分の体に何が起きていて、どのようなリスクがあり、いかなる治療の選択肢があるのかなどの一般的な説明に加え、個々の患者さんの事情に合わせた治療方針などについても徹底的に検討し、患者さんご自身、御家族に納得の行く方針決定が出来るように心がけています。

外来、入院を問わず緊急性のある患者さんの例を除き患者さんの病態把握、診断、検査結果の確認、治療方針の検討、決定などは当センター内カンファレンスにて行っています。 ドクターのみならず、看護師、診療放射線技師、臨床検査技師、臨床工学技士、リハビリスタッフ、管理栄養士などのコメディカルスタッフも含め多職種での検討会を定期的に行っています。 医師のみならず患者さんに関わる全ての人が情報を共有すると共に、自分らがどのようにお役に立つべきかを話し合っています。

センター内カンファレンスにて、治療方針の検討、決定

当脳神経センターではくも膜下出血(破裂脳動脈瘤)や急性期脳梗塞(心原性塞栓症)などの迅速な対応や治療が必要な救急患者さんをいつでもお受けできるように24時間体制で必ず脳神経センター常勤医師が在駐しております。 特に心臓の不整脈により心臓内に出来た血栓が脳の血管に詰まる心原性塞栓症は治療ができる時間が限られており、如何に早く詰まった血栓をカテーテルで除去出来るがその後の患者さんの予後(症状、状態)が決まることが分かっています。

低侵襲脳神経センター長の近藤医師を中心に院内の関連職員および地域周辺の救急隊員らと密に連携し時間が勝負であるこの疾患の積極的治療に当たっており、多くの患者さんが言語障害や麻痺などの障害少なく自宅復帰されています。

低侵襲脳神経センターの構成

低侵襲脳神経センターの構成

入院から退院までの流れ

「未破裂脳動脈瘤」の一例です。

退院までのスケジュール

退院後の流れ

「未破裂脳動脈瘤」の一例です。

退院後の流れ
未破裂脳動脈瘤でお悩みの方へ
退院後の流れ